終活って、縁起でもない話なんですか？

―それでも僕が親に話したかったのは、“その時”が来たときに困らない準備の話

こんな悩みありませんか？

終活の話をしたら「縁起でもない」と怒られて、会話が止まった
死ぬ話をしたいんじゃない。“その時”に家族が困らないようにしたいだけ
義実家は拒絶、でも実家なら少しずつ話せる気がする

この記事では、「縁起でもない」と言われた経験をきっかけに、
“誰にも迷惑がかからないようにしておきたい”という気持ちを、どう親に伝えたかを整理しています。

「通帳や財産の話」ではなく「健康・連絡・物の整理」の話
拒絶されずに気持ちを伝える、声かけの例や心理的工夫
実家と義実家、両方で感じたリアルな温度差について

なぜこの記事が信頼できるのか？

筆者は、自分の親と義父母の“終活に対する温度差”に悩みながらも、
実家の断捨離や体調管理をきっかけに、少しずつ会話を進めてきた経験があります。

また、FPとして“相続や家族の困りごと”を設計する立場から、
「死の準備」ではない、“安心の設計図”としての終活の考え方をお届けします。

この記事を読むとどうなる？

「縁起でもない」と拒否されたときの、声かけの工夫がわかる
健康や物の整理から始める、“終活の前段階”の作り方が見える
実家と義実家で話し方や伝え方を変えるためのヒントが得られる

🔍拒絶された日の、あの一言

―「今そんな話をするなんて…」

思わず口を閉じてしまった、あの日の記憶

あの日、義親に言ったのは「何かあったときに、連絡先だけでもまとめておけたら」でした。
“死”という言葉は一切使っていないのに、義母の反応はこうでした。

「縁起でもないこと言わないで。私はまだそんな年じゃない」

その瞬間、空気が一気に重くなり、僕は何も返せなくなりました。
悪気があったわけじゃない。ただ、“その時”に誰かが困らないようにしたいと思っただけなのに。

僕のなかには、親戚が亡くなったときに「誰が連絡を取るか」「通帳はどこにあるか」など、
バタバタになった経験が残っていて。あれは本当に大変だった。
だから、義親にはそんな想いをさせたくなかっただけなのに。

でも、“準備をしたい”という気持ちが、“死を意識させる態度”だと受け止められてしまった。
それが、親世代の心理的なハードルなのかもしれないと、初めて気づきました。

「縁起でもない」の一言が、会話を止める理由

― “終活＝死ぬ準備”というイメージが、親世代の防衛本能を刺激する

✅「縁起でもない」は、“死”そのものではなく“死を連想する態度”への拒絶

親が「縁起でもない」と反応する背景には、単なる言葉の迷信だけでなく、
「その話が、自分の死を現実として扱った」ことへの恐れや怒りが潜んでいます。

自分の存在が終わることを、家族が当然のように語ることが受け入れがたい
死ぬ準備＝“その時が近い”と捉えられた不快感
まだ健康で元気なのに、なぜ今そんな話？というズレ

これは、「死」というテーマ自体というより、
“死を準備する態度”が、生きている本人の存在価値を否定するように映るためです。

✅言葉の選び方で、意味が180度変わる

「終活を考えよう」は拒否されても、
「家の片づけを少しずつしよう」「連絡先をまとめておこう」は受け入れられるケースもあります。

実は、これも終活の一部。
“死”を語らず、“安心”を語ることで、同じ行動が許容されるのです。

✅心理学で見ると、「自己概念の防衛」が背景にある

心理学的には、「縁起でもない」という拒絶は、
自己概念（自分はまだ若くて元気）を守ろうとする防衛反応と捉えられます。

老いや死に関する話は、自分の“今”を否定するように感じる
家族にとっては「準備の話」でも、本人には「もう終わりに近い」と感じる
自分の価値が“もう後半”と判断されたようで、傷つく

このような心の動きに配慮すると、
「死ぬ準備」ではなく、「家族が困らないようにする準備」へとリフレームできるはずです。

第2章｜それでも親に伝えたい、子の本音とせめぎあい

―安心してもらいたい気持ちと、“まだ元気でいたい”気持ちの間で

✅「迷惑をかけたくない」という願いが、“余計な心配”に見えてしまう壁

子ども世代が終活に触れたい理由は、決して“死の準備”ではありません。
本音はもっと切実で、もっとささやかです。

「連絡先や保険、通帳がどこにあるかわからないと困るから」
「病院や介護が必要になったとき、本人の意思を知っておきたい」
「いざというとき、家族が慌てなくて済むようにしたい」

これらはすべて、親の命や財産を守り、尊重するための行動です。
でも、親からすればそれが“死を想定している態度”に映り、拒絶につながってしまう。
そのすれ違いが、子にとってはとても苦しい――。

✅実際には“せめぎあい”があるからこそ、言葉の設計が必要になる

親にとっては、

「まだ元気だから、そんな話は早すぎる」
「自分の老いを話題にされることが嫌」
「死や相続の話は、縁を切るようで不吉」

一方で子は、

「親が困らないように、そっと準備しておきたい」
「元気な今だからこそ、話しやすいと思った」
「死の話ではなく、生活と安心の話だと思っている」

このズレを埋めるには、“準備”という言葉の再定義が必要です。
それは「死に備える」準備ではなく、**“安心して暮らすための確認作業”**として伝えること。

✅「まだ早いよ」という言葉は、“守られてる”という感覚への裏返しでもある

親が拒絶するのは、自分が守られている立場から、守る立場に移ることへの抵抗かもしれません。
それは、「親としての役割」や「家をまとめてきた責任」が、終わりつつあることへの寂しさ。

だからこそ、伝え方に思いやりが必要です。

「いざというとき、親が困るのが一番つらいから」
「死ぬ話じゃないよ。安心して過ごす準備の話だよ」

このように、相手の感情にラベリングしながら“守りたい気持ち”を語ることが、親世代の“自己概念”を傷つけずに話し合う鍵になります。

第3章｜実家と義実家で感じた、終活への“温度差”

―年齢・価値観・そして“働いているかどうか”が、死への距離感を決める

✅実家は「準備は当たり前」義実家は「まだその時じゃない」

実家（80〜90代）では、親自身が「いつ何があるかわからないからね」と、
通帳や保険、持ち物の整理を進めていました。
もう“いつでも起きうる”という認識があるから、
終活という言葉を使わなくても、安心のための備えが自然に暮らしに馴染んでいるのです。

一方で義実家（60代後半）は、まだ定年から10年も経っていない。
しかも、実際に今も働いている状況。
だからこそ――

「死ぬ準備なんて考える余裕もないよ」
「まず働かないと食べていけないんだから」

というリアルな声が返ってきます。
“老後”も“終活”も、生活の先にある遠い話だと感じているのです。

✅働き続けている＝「老いを語ること」が実感に追いつかない

義親にとっては、まだ社会との繋がりがあり、「自分は現役」と思っている状態。
終活の話は、そんな“今の自分”を否定するように映ってしまうこともあります。

「自分がまだ働いているのに、終わりの話をするなんて」
「稼がないと生活できないのに、準備の話をされても響かない」
「生きることで精一杯なのに、“死”に焦点を当てられるのが嫌」

この反応は、単なる“死への拒絶”ではなく、
“目の前の生活”と“未来の不安”の重なりに、余白がないことの現れなのかもしれません。

✅だからこそ、“生活を守る整理”という文脈が必要になる

義実家にとって刺さらなかった「終活」という言葉も、
「働けなくなったときに、家族が慌てないようにしておく」
「今働けているからこそ、今のうちに少しまとめておく」
という言い方に変えると、“現実の生活を守るための備え”として届くようになりました。

伝え方は、あくまで“今を肯定すること”から始める。
「まだ元気」「まだ働いてる」「まだやりたいことがある」――
だからこそ、“その続きも守れるようにしたい”という気持ちの設計が必要です。

第4章｜“安心の設計”は、親と子が見ている景色の違いから始まる

―「縁起でもない」にどう返す？その一言の奥にある“守られたい気持ち”を読み解く

✅親が言う「縁起でもない」は、否定ではなく“今を守りたい”という防衛反応

「終活の話をしたら、縁起でもないと返された」――よくあるエピソード。
でも、その言葉の裏には単純な拒否以上の心理があります。

親世代にとって、

終活＝自分の死を前提にされたようで怖い
まだ元気なのに“終わらせにきた”ように感じる
自分の立場や役割が“もう終わる”と言われたような感覚

これは、自分の存在が今ここにあることを認めてほしいという感情の表れです。
だからこそ「縁起でもない」という言葉で、自分の“今”を必死に守ろうとするのです。

✅親は“安心を手渡す準備”ではなく、“安心の中にいたい”と思っている

子ども世代が話したいのは、「いざという時に困らないように」
でも親世代は、「その話＝いざという時が近い」と感じる。
このズレが、拒絶の温度差を生みます。

実家（80〜90代）は、“もう起こってもおかしくない”という認識があり、話が届く
義実家（60代後半）は、“働かないと食べていけない”という現実感が強く、死を意識する余裕がない

この立場の違いが、“安心の設計”のスタート地点をずらしているのです。

✅正解の返し方は、「死ではなく“今”を守りたい」と伝えること

「縁起でもない」と言われたときの返答で、相手の防衛感情を刺激しないためには――
死の話ではなく、“今を肯定するための準備”だという再定義が必要です。

たとえばこんな言葉たち：

💬「死ぬ話じゃないよ。親が困らないようにしておきたいだけ」
💬「“死に備える”んじゃなくて、“今の安心を続ける”ための整理だよ」
💬「働けている今だからこそ、まとめておけたら後でラクになるかもって思っただけ」

大事なのは、「不安を伝える」のではなく「安心を守りたい」と話すこと。
この言い換えが、親の感情と自己概念を傷つけずに、“準備の話”へと橋渡ししてくれます。

🗂️「縁起でもない」に返すフレーズ表｜親の心理タイプ別

親の心理タイプ	拒絶の背景	傷つけず返す声かけ例	会話が進みやすくなる工夫
🛡️ 今の自分を守りたいタイプ（自己概念の防衛）	まだ元気なのに「終わり」を語られた気がする	「死ぬ話じゃないよ。安心して今を暮らすための準備だよ」	現在の健康・生活を肯定する言葉から始める
💼 働いていて現役タイプ（現実優先）	終活より“生活のために働くこと”が優先	「今は忙しいと思うから、時間のあるときでいい。ちょっとだけ連絡先だけでも」	生活への配慮と負担軽減を目的に据える
❤️ 感情に揺らぎやすいタイプ（感情的防衛）	不吉・悲しい・縁起でもないというイメージ	「その話をしたかったんじゃなくて、親が困らないようにしておきたかったんだ」	感情ラベリング（驚き・怖さ・不安）→気持ちの共有を先に置く

💡補足：このフレーズ表は、「親との会話が止まった時に、どんな言葉で再開できるか」を考える“感情×構造×行動”の導線です。親の年齢や働いているかどうかによっても、該当タイプは混在します。ひとつずつ、丁寧に言葉を設計していくことで、拒絶の奥にある“安心されたい気持ち”に届いていきます。

第5章｜“話しづらさ”を逆手に取る、終活の入口づくり

―「縁起でもない」と言われたからこそ、“話題にならない話題”から始めてみる

✅「話しづらい」は、“誰もが思ってるけど口にできない”から価値がある

終活については、子も親も「話さなきゃ」と思っていても――

「いざ言うとなると、どう切り出していいかわからない」
「相手が嫌がったら、その後の関係に響きそう」
「親がまだ元気だから、失礼だと思われるかも」

でも実は、“話しづらい”と感じていること自体が、話す価値がある証拠でもあるのです。
「誰もがそうだからこそ、設計できたときの安心感が大きい」――その空気を入口に変えていきます。

✅入口は「死」じゃなくて「生活」から。日常の小さな違和感がきっかけになる

具体的に話し始めたきっかけはこんなところでした👇

急な入院で「何を持っていけばいいか」がわからなかった
宅配業者に「家族の連絡先、わかりますか？」と聞かれたときに焦った
保険証やマイナンバーカードが、どこにあるか本人も把握していなかった

こういった“生活のちょっとした不便”を入口にして、
**「いざという時のために、元気な今のうちにまとめておこうか」**と持ちかけることで、自然に話題が展開できます。

✅“話しづらい”から始まるフレーズテンプレート集

以下は、読者がそのまま使える会話例として構成👇

シーン	親の抵抗が強そうなときに使える入口フレーズ
🛋 日常会話中	「最近さ、突然入院って話を聞いて…連絡先ってわかるようにしてる？」
💼 書類整理中	「この引き出し、何が入ってるか一緒に確認しとこっか。使うかもしれないし」
🧺 片づけ中	「この部屋、片づけたらもっと風通し良くなりそう。手伝うよ」
💳 通帳・保険の話題に触れるとき	「通帳って、どこにしまってる？急なときに家族が困らないようにと思って」
📞 連絡先・家族の共有	「○○さんの連絡先、わかる？何かあったときって家族間で連絡できるようにしときたいな」

どれも、「終活」「死」という言葉を使わず、“生活の安心”をベースに置いた設計です。

✅終活の話は、“死”からじゃなく“あれ、困ったな”から始まる

義実家にて。車検の書類を出そうとしたとき、保険証券が見つからなかったことがあります。
どこにあるか誰も知らなくて、義母も「たぶんあの引き出しじゃない？」と手探り状態。
結果的に再発行になったけれど、その数日間のバタバタが本当に面倒だった。

でもふと考えたんです。
これ、“もし本人が不在だったら”誰が対応するんだろう？って。
書類1枚なくても大混乱になるのに、これが医療だったら、資産だったら……
そう思うと、「終活っていきなりする話じゃない」と実感が湧いてきました。

✅「面倒を避けるための整理」から入ると、話しやすさがグッと上がる

車検で必要な保険証券、家族が把握しているか？
緊急時に必要な書類、どこにしまってあるか？
本人しか分からない保管場所が、実はけっこう多い

これらは全部、“生活の中で起きるちょっとした困りごと”です。
死とは関係ないけれど、終活の目的である「家族が困らないようにすること」には直結している。

だからこそ、こう言えるようになります：

「この前、車検のとき保険証券が見つからなくてさ…。
ああいうのだけでも、わかるようにしておいてくれると助かるなって思った」

→“気遣いのお願い”として言いやすく、“終活”という言葉を避けながら本質に触れられます。

了解です、kouheiさん。ではこの流れを受けて、拒絶や話の遮断が起きたとき、“繋ぎ直す行動”をどのようにデザインすればいいか──心理設計と感情の地ならしの視点から、第6章をご提案します。

第6章｜拒絶されても諦めない。「繋ぎ直すための行動設計」

―“話せない空気”の向こう側にいる家族へ届けるには

✅拒絶は「価値観の防衛本能」であり、“関係性の崩壊”ではない

終活の話を持ちかけた時、義母に「そんな縁起でもないことは言わないで」と遮られた。
ああ、やっぱりダメか……と落ち込んだけれど、拒絶された＝家族関係が悪いというわけではなかった。

これは単に、「本人の価値観に触れてしまった」から起きた反応。
つまり、拒絶は“家族への不信”じゃなく、“自分の価値観の防衛”なんです。
だから、【説得よりも距離感の再設計】が必要なんだと気づきました。

✅「本人不在でも大丈夫」な状態づくりを、少しずつ“繋ぎ直す”

それ以降は、こんな工夫をしてみました。

車検で保険証券が見つからなかった話を共有し、「ああいうのあると困るから、ちょっと整理してくれると嬉しいな」と“お願いの形”で接点を持つ
家族LINEに「災害時の連絡先テンプレ」を送って、重要情報の共有を“イベント化”してみる

これらは、「終活をしたい」という話ではなく、
“私が助かるから”や“この前こんなことがあって”という日常ベースの再接続。

つまり、拒絶されたあとも“話す空気”は、自分の行動でもう一度育てられる。

第7章｜“もしもの時”を想定した、「家族の安心設計」

―動揺より先に、“共有された行動パターン”が家族を助ける

✅「本人不在」でも迷わず動ける状態をつくる

保険証券の所在がわからなくて再発行になった件。
家族は「これってどこにある？」「どうしたらいい？」と戸惑ったけれど──
それってつまり、「本人がいない場合、困ること」が浮き彫りになった瞬間。

この実体験からわかることは一つ：

“家族の安心”とは、「情報の所在」ではなく「動き方が共有されていること」

保険証券 →「再発行時はこの窓口、必要書類はこれ」のテンプレ
車検・更新作業 →「誰が何をやるか」「見落としやすいポイント」付きの共有ノート
災害時・急変時 →「連絡順」「連携先」など、感情が揺れた時でも迷わず動ける行動設計

✅「見える化」ではなく「使える化」する

よく“終活＝見える化”と表現されるけれど、kouheiさんの記事設計なら、
単なる情報リストではなく、“使える動線”があることが重要になります。

見える化	使える化
書類の場所がわかる	それをどう扱えばいいか、家族が知っている
気持ちを伝えた	“どんな時に何をしてほしいか”行動に落とされている
形式的なリスト	状況・感情のバリエーションに応じたテンプレ付き

→“行動まで落とせている”からこそ、家族も本人も安心できます。