ダグラス・ラシコフの驚くべき体験についてご紹介します。彼の話は、デジタル生存競争の現実を浮き彫りにしています。
本当に怖いものとは?
結論、私たちが本当に怖いのは拳銃を持ったボートや暴れるボートではなく、飢えた赤ん坊を抱いた女性が来ることとのこと。
これは、誰が生き残るかを問うデジタル生存競争の一環だそうです。
ダグラス・ラシコフの背景
ダグラス・ラシコフは、かつてシリコンバレーの頭脳と呼ばれ、デジタル経済学の第一人者でした。
1990年代から2000年代にかけて、彼はシリコンバレーとIT産業を肯定的に捉え、人類を救う未来の技術だと熱心に語っていました。
しかし本作ではその正反対のことを言っていて、アメリカでは注目されています。
ラシコフはデジタル革命の推進者から撤退し、ニューヨーク大学やニューヨークカレッジで教えています。彼は演劇などを交えた多彩な授業を行う先生です。
デジタル生存競争: 誰が生き残るのか
豪華リゾートへの招待
数年前、ラシコフは砂漠の真ん中にある超豪華なリゾートに招待されました。
依頼内容は暗号資産や技術投資に関する相談だろうと思っていた彼は、報酬の高さ(年収の3分の1)に驚きビジネスクラスの切符も用意されていたため、参加を決意しました。
リゾートでの体験
リゾートに到着すると、そこは金持ちの貸し切りで、誰もいない広大な施設でした。
翌朝、パタゴニアのフリースを着た2人組がゴルフカートで迎えに来て、公演会場に連れて行かれました。
そこには5人の超大金持ちが待っており、1対1のQ&Aセッションが始まりました。
ビリオネアたちとの対話
彼らは暗号資産や技術投資について質問しましたが、ラシコフは彼らが彼の知識や倫理観をテストしていると感じました。
彼らはIT投資やヘッジファンドの上層部にいる男性たちで、資産は1000億円以上のビリオネアでした。
ここからが本題の入り口です。
知識や倫理観をテストするような質問
最初の1時間は、ラシコフの知識や倫理観をテストするような質問が続きました。
しかし、1時間が経過した頃から、質問の内容が変わり始めました。
- 「温暖化で移住すべき場所はニュージーランドですか、それともアラスカですか?」
- 「パンデミックが起こったら、どの土地が一番安全ですか?」
- 「戦争と核戦争のリスク、どちらが高いですか?」
- 「シェルターを作るとしたら、どのようなシステムで空気を供給すればいいですか?」
- 「地下水が汚染される可能性はありますか?」
ラシコフは、なぜ自分がこんなに多岐にわたる質問をされるのか不思議に思いながらも、誠実に答えていきました。
そして、いよいよ本題に突入することになります。
大金持ちの考えと未来への備え
事件が起きた後の対策
大金持ちたちは、環境破壊や核爆発、大規模な内戦などの「事件」が起きた後の世界を心配しています。
彼らは熱心に専門家を招いて対策を話し合っています。
警備隊の忠誠心を保つ方法
事件が起きた後、暗号資産の価値がなくなった場合、警備隊の忠誠心をどう保つかが問題です。
電子的な首輪や特別なロック、警備ロボットの導入などを考えています。
世界の終わりと生き残る方法
大金持ちたちは、世界が終わることを前提に、自分たちだけが生き残る方法を探しています。
イーロン・マスクが火星を目指すのも、エリートたちが終末の日の安全な場所を求めているから???
巨大資本主義とデジタル経済の影響
巨大資本主義とデジタル経済は、人間らしさを失わせ、非人間的な社会を作り出しています。
ウォルマートやAmazonのような企業が商店街を潰し、非正規雇用を増やしています。
デジタル経済の問題点
デジタル経済は便利さを追求する一方で、地方の商店街や地元ジャーナリズムを消滅させています。
Uberやタクシーアプリも同様に、人間らしさを修正すべきバグと見なしています。
21世紀型の支配者の考え方
21世紀型の支配者は、20世紀型の政治家や財閥トップとは異なり、世界を住みにくくすることで利益を得る競争をしています。
この競争が続く限り世界はますます住みにくくなり、最終的には「事件」が起きる可能性が高くなります。
大金持ちたちは、世界が危険になると考え、自分たちだけが生き残る方法を真剣に模索しています。
これは私たち一般人が感じる不安と似ていますが、彼らは絶対に自分たちは生き残れると信じています。
破滅への投資
IT企業やヘッジファンドのトップたちは、誰も信じなかった可能性に賭けて成功した人たちです。
だからこそ、今度は誰も信じていない破滅に投資し始めています。
彼らは、自分たちの富が世界を破壊していることを自覚しつつも、その破滅から逃れる方法を探しています。
21世紀型の支配者の特徴
現代の支配者たちは、20世紀の政治家や財閥トップとは異なり、社会性を持たないことが多いです。
彼らは家族や一族に対する責任感が薄く、自由に移動し、巨大な権力を持っています。
シェルターの現実
大金持ちたちは、核シェルターや農園付きのシェルターを真剣に考えています。
これらのシェルターは、非常時には近所の軍人や警官が警備員として働くことを前提にしています。
しかし、シェルターの運営者自身も、道徳的な問題に直面することを恐れています。
道徳的なジレンマ
シェルターの運営者は、飢えた赤ん坊を抱いた女性が門の外に立ったとき、警備員に彼女を撃てとは言えないと感じています。
完全な隔離策よりも、そんな状況が起きないような世界を作る方が現実的だと考えていますが、金持ちはその考えに賛同しません。
これらのシナリオに対応するための対策が、超高級リゾートなどで真剣に議論されています。
プライベートアイランドとシェルター
コロナ騒動の後、プライベートアイランドの需要が急増しました。
ヘリポート付きで農業が可能な島が争奪戦となり、億万長者たちはこうした場所を求めています。
しかし、資産10億ドル程度の億万長者はまだ「低レベル」と見なされ、本気で巨大シェルターや宇宙移民を目指せるのは、さらに巨額の資産を持つ者たちです。
海上都市と統治革命
フランスのシーステリン研究所は海上に人工都市を作り、法律の無力化を実験しようとしています。
各家族が独自のルールを持ち、それを強制しない形での統治を目指しています。
これは、法律の限界を試す新しい試みです。
支配者たちの計画
現代の支配者たちは、世界を自分たちが儲かる形にまとめつつあります。
しかし、その形は終わりのあるゲームであり、破滅から逃れるためには破滅させない仕組みが必要だとラシコフは言います。
彼らは、1970年代から80年代に計画されたバイオスフィアのような完全な生態環境を作る実験を続けていますが、成功はしていません。
無理ゲーと破滅
超金持ちたちは、無理ゲー(無理なゲーム)に挑戦し続けています。
彼らの無理ゲーに付き合わされることで、世界は破滅に向かっています。
ニューヨークのシェルター付き農園のように、能力の高い人々だけが生き残れる世界を作ろうとしていますが、それはディストピアの世界であり機能しない可能性が高いです。
まとめ
支配者たちは、飢えた大衆や破壊された社会を見ずに済む世界を望んでいます。
彼らは、自分の家族や子供に惨状を見せたくないと考えています。
そのために、どんな手段も使う決意をしています。
このように、大金持ちたちは未来の「事件」に備え、自分たちだけが生き残る方法を真剣に考えています。
しかし、その過程で多くの人々が犠牲になる可能性があります。
デジタル経済の進展がもたらす影響を考え、より人間的な社会を目指すことが求められています。
読み応えのある本でした。気になる方は